70代になる父親が前立腺がんで手術を受けました。
幸い、手術は無事に終わり、その後の経過も順調です。
我々、家族もほっとしています。
ただがんの手術から入院というプロセスが私たち家族にとって初めてのことであり、色々な不安もありました。
同様に世の中には前立腺治療やがんの手術に対して不安を持つ人も多いと思います。
今回は父親を含めた私たち家族が感じたこと、治療や手術に至るまでの経緯などの語らせてもらうことで、そうした不安をもつ方への少しでも精神的な負担の軽減になり、知識の共有ができればなと思います。
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夜間の頻尿から始まった
父親が前立腺の異常を感じたのは、夜中の頻尿が非常に増えた時からです。
3年ほど前から夜間に感じる尿意の回数が増えたにも関わらず、トイレで出る尿の量が非常に少なくなったということ。
その状態が半年ほど続いた時にさすがにおかしいと気づき、病院で検査をしてもらったところ「PSA数値」が高いということが分かったのです。
PSAとは「前立腺特異抗原」と呼ばれる医学用語の略称で、前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパクということだそうです。
この数値の平均は4ng/mL以下らしいですが、父親は10近くなっていたそうです。
このときは医師から「前立腺肥大」と診断され、そのための投薬治療を受けることになりました。
基本は薬を飲むことで、定期的に病院で検査を受けるという日々が続きました。
一時期は少し収まっていたのですが、夜間の頻尿はその後もしばしば続き、その状態が2年近く続いたのです。
前立腺肥大からがんの疑いが濃厚に
去年の始めに検査を受けたところ、PSA数値がかなり上昇したことが判明。
そのときは16にもなっていたということでした。
それまでのかかりつけの病院から市民病院を紹介してもらい、そこで再検査を受け、前立腺がんの恐れが高いと診断を受けたのです。
このときの父親の落ち込みは結構大きかったらしく、私も後でそのことを母親から聞き「さすがにそうだろうな・・」と納得しました。
父親はもともとスポーツマンであまり物事をくよくよ考えない性格で、それまで大きな病気もしたことがないほど健康体でした。
なので、余計のその反動が大きかったのかもしれません。
とはいえ、知り合いに前立腺がんで手術を受けた人がいたらしく、その人から「そんなに厳しい病気じゃないよ」ということを後で聞き、少しほっとしたらしいです。
ともあれ、その日から前立腺肥大から前立腺がんに病気が移行し、これまでとはまったく違ったステージでの治療が始まったのです。
前立腺がんが正式に判明
ただ「がん」になったといっても、あくまで「可能性」です。
ですので、それまでの肥大症の服薬も続けていましたし、夜間の頻尿も変わりませんでした。
その状態が半年ほど続き、数値があまり変わらなかったこともあり、今度は入院検査を受けることに。
一日入院し、そこで尿や血液、前立腺の細胞を採取してより詳しく調べるということでした。
このときの採取の様子を父親は「恥ずかしかった」と述べています。
ベッドに仰向けになって、下半身をむき出しにして、お尻の穴から機器を入れて検査と採取をするというものだったそうです。
当然、若い看護婦さんもいたようで、いくら70代と言っても気分は若い父親としては「たまらん」という状態だったようですね。
まあそれは余談で、この検査を「生検」というようですが、その結果が一月後に出るということでした。
その検査の結果で「前立腺がん」であることが正式に判明。
ここで本格的に前立腺がんとの向き合いが始まったのです。
経過観察から手術へ
とはいえ、前立腺がんの状態を示す数値はそこまで高くないということも同時に判明していました。
なので、医師からは「手術をするか、経過観察をするか」の判断を求められました。
経過観察とは、文字通り「しばらく様子を見る」ことです。
さすがに悩んだ父親は母親や私に相談することになり、家族で集まり、今度の取り組みを話し合いました。
私もネットや書籍で情報を収集し、父親や母親と語り合った結果「経過観察がいいんじゃないか?」と自分の考えを述べました。
父親もそれがいいと納得し、そのことを病院に話し、定期的な検査を受けながら経過を観察することになったのです。
しかし、それから半年後の検査で再びPSAの数値が跳ね上がることになりました。
さすがにこれは看過できないと思ったのか、医師は父親に強く手術を進めてきたそうです。
父親も観念したのか、そのことを受諾しました。
その後に私も母親も呼ばれて、父親と一緒に病院の医師に詳しい話を聞くことになりました。
ロボット手術になること。
ロボット手術とは、医師が直接メスをもって執刀するのではなく、ロボットのアームを使って行う手術です。
開腹ではなく、穴を数か所空けてアームで前立腺を取り出すので、通常の手術より安全で早く終わるということでした。
あとは手術後は2週間程度は入院すること。
などです。
治療費のことを相談すると、「前立腺がん」の手術は国民健康保険で賄えるので、高額療養制度を適用できるとのことでした。
手術はその相談の日から2か月後に行われることに決まりました。
手術の詳細と当日のこと
手術の2週間前には「コロナ」にかかっていないかどうかを報告する必要がありました。
もしかかっていたら手術は延期ということ。
幸いそれはなく、手術のために父親は前日から病院入りし、手術前の検査を受けることになりました。
その日は家族も病院の待合室で待つように伝えられ、私も仕事を休んで母親と病院に向かうことに。
待合室といっても、長椅子とテレビと週刊誌が置いてあるだけの部屋で、ここで手術が終わるまで待たなくてはいけません。
常に家族の誰かが待機していないといけないということで、母親は私の同室を望んだのです(食事やトイレに行く必要があるため)
その日の手術の予定時間は4時間。
殺風景な待合室で4時間も待つのはなかなかの苦痛に最初は思えましたが、本やタブレットを持ち込んでいましたし、時折母親と話したりするので、実際にそこまで退屈することはありませんでした。
そして待合室のスピーカーで名前を呼ばれ、外に出ると移動式のベッドに載せられた父親が医師と看護師さんに付き添われて、部屋の前に来ていました。
「大丈夫か?」と聞くと、父親は意識がもうろうとしているのか、その状態で立ち上がろうとしたので、慌てて「そのまま寝とき」と止める一幕も。
それから父親は入院する予定の部屋に運ばれ、私たちはもうしばらく待合室で待機するように伝えられたのです。
それからまもなく再び呼ばれ、今度は医師が私たちを出迎えました。
医師専用の部屋に案内されて伝えられたのは「手術は無事終わりました」ということ。
このときは正直「ホッ」としました。
万が一「命の危険がある」となったらどうしよう、と一抹の不安を抱えていたからです。
続いて「これを見ますか?」と言われて差し出されたのが、摘出した前立腺そのものです。
それはまるで赤黒くなった「レバー」の固まりのようで、拳サイズでした。
肥大した部分がそこまで大きくないことも判明し、がんの部位は内部の組織になるので、この状態では分からないです、とも言われました。
私はかなり興味深かったので「なるほど、これが前立腺というものか・・」としばらくまじまじと眺めていたのですが、横の母親は「うわぁ・・」という感じで気持ち悪そうに顔をそむけていましたね(苦笑)
医師に礼を言い、私と母親はその日はそのまま帰宅することになりました。
父親はもちろんしばらく入院です。
がん手術後の入退院と経過
それから1週間、父親は入院していました。
コロナということで、お見舞いはできず、必要なものがあれば電話で父親が連絡してきて、それを母親か私が病院に持っていき、受付で渡すという感じでした。
本当は一月と言われていたのですが、術後の経過も良く、1週間後に退院となったのです。
退院当日は私も母親と一緒に病院に行き、父親を迎えました。
思ったよりも元気そうで、自宅に帰れるのが嬉しそうでもありました。
病院の自動支払機で治療費の支払いを済ませ、タクシーで自宅に帰還。
病院に持って行ったのは「紙おむつ」「タオル」がメインでしたが、これが結構かさばっていて、使いきれない分もかなりありましたね。
それから少しして再び病院に父親に付き添うことになり(母親は所用で無理だったため)、別の担当医師の方と話し合うことになりました。
検査結果の数値は良好だということ、今後はがんの動向を注視する検査に移るということ。
なので3か月に一度は検査のために来院するということに決まりました。
尿漏れはしばらく続くので、病院で行っていた体操は毎日続けてください、ということ。
前立腺に関しての治療はこれで終了、ということになったのです。
尿漏れについて
尿漏れはしばらく続いているそうです。
というか、以前よりも激しくなったということ。
前立腺を取り出したために、物理的に抑えていた部分が解放されて、尿を溜めることが難しくなっているということだそうです。
これを防ぐには体操で筋肉を鍛えることに尽きるということ。
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尿漏れ体操を続けることと、自然治癒で尿周りの筋肉の回復を待つこと。
少なくとも半年は漏れが続くようです。
手術後から1月は少し動くだけで「ジョビッ」と漏れが続くので、とにかく「おしめ」が手放せないとのことでした。
ただ4か月ほど経過した今は、だいぶん「尿漏れ」はマシになっているとか。
このまま行くと順調に頻尿が治る方向だと実感していますね。
高額療養費の手続きの方法について
今回の手術は国民健康保険適用内なので、一定以上の治療費は支払う必要がありません。
我々家族はこういう手術は初めてだったので、事前に役所に行って詳細を聞くことになりました。
1か月の治療費の上限は「5万円前後」ということ。
療養費の額は被保険者の所得によって変わってくる。
高所得の方であれば、負担する金額はもう少し上がるけれども、父親は退職して年金で暮らしているので所得も少なく、その限度額が適用されたということ。
衣服代、食事代、差額のベッド代(個室など)は自腹。
1か月を越える入院になると、超えた分がたとえ数日間でも、請求される額は「5万円前後」ということでした。
「差額」は請求することで返還されるので、実質的な費用は実費分になります。
前立腺手術の手術代はロボットアームを使ったものもあり、100万円を超えると思われます。
あとは大部屋の滞在費なども含めると、1種間程度でもそれなりのお金になりますが、これらが全て高額療養費で済ませられます。
毎月支払っている国民健康保険のおかげですね。
手続きは健康保険に入っていれば自動的に病院側で差し引いてくれるということですが、不安であれば事前にお住いの役所に問い合わせるか、病院側に相談すると良いと思います。
ちなみに父親は別に民間の医療保険に加入していたので、さらにそこから入院代をいくばくか安くできたようですね。
とはいえ、1週間程度だったので、5千円ほどが返還されるレベルのものだったようですが。。
まとめ
以上が父親と私たち家族が体験した「前立腺がんの手術と入退院の顛末」です。
手術を受けたのは父親なので、その痛みや苦労は彼にしか分からないのですが、家族にとっては「不安」という意味では同じ価値観を共有していたと思います。
同様の不安や悩みを持つ方や家族は全国に多くいると思います。
その不安の根底には「分からないことが多い」ということ。
今回の情報が、少しでもそういった方への知識の参考になれば嬉しく思います。