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影のCIAの異名をもつ戦略家ジョージ・フリードマン氏のロシア予測まとめ

2022年5月10日

国際問題の戦略家であり、世界的インテリジェンス企業「ストラストフォー」創設者ジョージ・フリードマンの著書レビューです。

2009年に発刊された「100年予測」という国際問題の未来予測本が大ベストセラーになり、当時たまたま本屋で見つけて「面白そうだ」と購入して以来の著者のファンになっています。

実際に歴史や地理、経済、社会体制など多岐に渡る鋭い分析と知見が満載で、分析・予測本としても、またフィクションを絡めた読み物としても非常に面白く楽しませてもらいました。

そんな氏が著書で提唱してきた「危機」が、今まさにヨーロッパで実際に起きてしまっています。

2022年2月24日に始まったロシア軍によるウクライナ侵攻が同年5月現在でいまだ進行中であり、紛争解決の糸口が見えてきません。

なぜロシアはここまでウクライナにこだわるのか?

ロシアが抱いてきた危機感は?

プーチンが目指す世界観は一体どんなもの?

次々に頭に浮かぶ疑問や思考・・・

今回はフリードマン氏の100年予測シリーズの3冊の中から「ロシア」に関する予測と分析をかいつまんで紹介していき、私同様にロシアとウクライナの今後の未来を少しでも知りたい方への知見の参考にしたいと思います。

まずはフリードマン氏の簡単な経歴を紹介し、次に著書のロシア評を取り上げていきます。

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著者ジョージ・フリードマン氏の経歴

まずはフリードマン氏の簡単な生い立ちを。

・1949年ハンガリーのブタペストで生まれる。

・両親はナチスドイツによるホロコーストを生き延びたユダヤ人。

・ソ連による東ヨーロッパ支配を嫌い、家族と共にアメリカに移住する。

・ニューヨーク市立大学を卒業後、コーネル大学で政治学の博士号を取得。

・ルイジアナ州立大学地政学研究センター所長を経て、1996年に世界的インテリジェンス企業「ストラストフォー」を設立。政治、経済、安全保障にかかわる独自の情報をアメリカや各国の政府機関、一流企業に提供し、「影のCIA」の異名をもつ。

・ストラストフォーのCEOを退職後、2015年に世界情勢の分析・予測情報を提供するオンラインメディア「ゲオポリティカル・フューチャー」(GRF)を設立して現在に至る

過酷な少年時代を経て、家族と共にアメリカに移民をした東欧出身のフリードマン氏。

その生まれ育った環境と人種的な歴史性(ユダヤ人)からくる「物事を予測し、危機を事前に読み取る」気質が、氏を世界的な戦略家に押し上げる原動力になっていると感じます。

そんなフリードマン氏の著書は多岐に渡りますが、とくに近年の代表作である「100年予測シリーズ」が秀逸。

日本に関する記述も多く、そこに個人的に魅かれて購入したというのもあります。

とくに目を引くのが、日本のバブル絶頂期だった90年代初頭に書かれた著書「カミングウォーウィズジャパン」や、2009年以降に書かれた「100年予測シリーズ」で一貫して主張している、

「日米はいずれ戦う運命にある」

というくだりです。

バブル時代のそれは幸いにも当たることはなかったのですが、2009年の著書で予測された日本に関するくだりでは、いずれくるだという戦いについての理由や背景、そして未来予測が詳細に描かれています。

過去から当時の現在までの分析は確かだと思いましたし、50年後の未来予測はSF的な内容でシンプルに「面白い」と感じました。

ここで問題なのは、アメリカ政府機関の意志決定に”一定の関りと影響力”をもつインテリジェンスの専門家が「日本をそう見ている」ということにあると思います。

ただそれを「荒唐無稽」「妄想だ」とバカにしたり、無視するのは意味がありません。

大事なのは「本当にそうなる」のではなく「アメリカが日本をそう見ている」という視点にあるということ(政府全体ではなく、あくまで影響力が高い専門家視点ですが)

その意味で氏の著書はアメリカの「日本観」の一端を垣間見ることができて、非常に参考になりましたね。

そんなジョージ・フリードマン氏の経歴や影響力を知った上で、氏の著書「100年予測シリーズ」の中の「ロシア」に関する分析と予測を紹介し、ヨーロッパ情勢の今後を読み解くうえでの一つの参考にしていければと思います。

「100年予測」(2009年)によるロシアの分析と未来図

まずはシリーズ一作目からのロシア編まとめです。

2009年から2020年までの未来予測を描いています。

2022年を迎えた現在ではすでに「過去」の予測になっていますが、分析と予測の根幹を成す「歴史」「地理」「経済」の知見は今も変わりません。

では概要を以下にまとめてみましょう。

【ロシアの過去から現在】

・ロシアは冷戦後、崩壊の危機にあった

・アメリカやヨーロッパ、中国がその気になってロシアにとどめをさしていれば、それ以降に起こるロシアによるヨーロッパへの危機は避けることができた可能性はあるが、各勢力が内向きであったり、分裂して弱かったり、別の問題にとらわれていたりして、実現できなかった。

・ロシアの弱点は常に北西部の国境地域にある(さえぎるもののない北ヨーロッパ平原のため)

・その矛先は強力なNATO諸国

・中国との国境地帯はシベリアを挟んで侵攻が不可能な地域で、北ヨーロッパほどの危険はない

・ロシアの戦略上の問題は、国土が広大な割に輸送機関が貧弱なこと

・周辺部全体を同時に攻撃されると、どれほど大規模な軍隊を持っていても防御が難しい

・複数の前線に軍隊を動員し、配置することができないので、事前に配備が可能な大規模な常備軍を維持しなくてはならない

・そのため経済に莫大な負担をかけて、弱体化し、内部崩壊をもたらす

・深刻な人口減少(2009年で1億4500万人、2050年には1億2500万人から9000万人に減少するといわれている)

・天然資源に恵まれたことで、労働集約性の低い資源輸出に舵を切ることができた

・資源輸出を通じてヨーロッパへの影響力も確保

・資源依存により、その富を守るために軍事力をより強化する必要にかられる(とくにヨーロッパ国境で)

【ロシアの基本戦略】

・北ヨーロッパ平原沿いに懐の広い緩衝地帯を作る

・周辺国を分裂させて操り、ヨーロッパに新しい勢力バランスを築くこと

・ロシアが断じて許容できないのは「緩衝地帯のない緊迫した境界を、周辺国が団結して守る状況」

以上がロシアを巡る分析と予想される今後の状況です。

著者では世界各地の情勢分析がまとめられているのですが、各章の最後にはアメリカ国家が目指すべき「その地域への取り組み方」で締めくくられています。

このあたりがアメリカへの戦略提言という香りがすごくして、日本の著書にはない「国家戦略」への取り組み方の一端が伺えます。

そこで書かれた「アメリカが取り組むべきロシアへの対応」が以下になります。

・ロシアはユーラシア全体を掌握する力を持たず、本当の意味での世界的脅威にならない

・ロシアが局所的に脅威を及ぼし、アメリカがそれに応酬する形になる

・ロシアとアメリカが対立した場合、ヨーロッパのロシアへの炭化水素燃料の依存が問題になる

・この依存を軽減するため、アメリカでは代替エネルギー資源開発が進む

・ロシアは既存エネルギー(石油と天然ガス)の生産に注力するため、今世紀後半を席巻する技術的発展の最前線を担うことはなくなる

・ロシアは資源と国境を守るために軍事能力を開発する必要にかられるが、重要な非軍事技術ではアメリカや世界に大きく後れを取ることになり、新技術の経済的な恩恵を受けなくなる

・結局は軍事支出の負担が経済に重くのしかかる

・2020年を少し過ぎた頃に、ロシアは崩壊する可能性が高い

【結論】ロシアの動きにアメリカが対応し、再び冷戦が起こるが、今回の冷戦は前回と比べれば小規模で、前回同様にロシアの自壊で幕を閉じる。

以上のようになっています。

2009年の予測ということで、著書では当たっていない部分もいくつかありましたが、概要ではおよその流れは当てはまっているような気がします。

とくに章の最後の「2020年を少し過ぎた頃に自壊する」は目を引きますし、2022年2月にプーチン大統領がウクライナ侵攻を行ったのも、そうした分析が当たっていて、ロシアが自壊する前に安全地帯を確保しようという狙いがあったのかもしれません。

しかしその作戦が上手く行かず、ずるずると経済と軍事力を削られている状況ですから、まさに「2020年を少し過ぎる頃に自壊する」が目前に迫っているのかもしれませんね。

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「新・100年予測」(2011年)によるロシアのドイツの関係

前著から2年後に刊行された新シリーズです。

本書は前著の内容をベースに置いているので、ロシアに関する記述も前回とそれほどベースは変わっていません。

なので、ここでは前著になかった部分を以下にまとめていきたいと思います。

【ロシアの戦略的な特徴】

・長期的には弱い国である

・エネルギー生産に特化するプーチンの戦略は短期的には景気を浮上させるが、大規模な経済発展には構造的な弱点に対処しなくてはならない

・ロシアの弱点は地理的な問題にある

・工業国家に珍しく、面積の割に人口が少ない

・広大な国土に人口が分散しており、警察機構と共通の文化でかろうじて結び付けられている

・モスクワやサンクトペテルブルグのような大都市でさえも、広大な耕地と森林によって互いに隔てられている

・食料を効率的に流通させること、都市と農業地帯を連結するインフラ、産業と商業の中心地を結ぶインフラが貧弱である

・こうしたインフラの連結性の問題は、ロシアの河川が不都合な方向に流れているため

・アメリカの河川は農村地帯と食料の流通拠点となる港を結び付けているが、ロシアの河川は障壁にしかならない

・ロシアはドイツとの関係に深い関心を示している

・ドイツはエネルギー供給をロシアに依存し、ロシアはドイツの技術を必要としている

【アメリカへの提言】

・ロシアはアメリカとヨーロッパを切り離す動きを見せている

・アメリカが中東やアフガニスタンでの対テロ戦争の泥沼にはまっているため、一刻も早くそこから抜け出し、ヨーロッパへの影響力を取り戻さなくてならない

以上が2011年の段階での分析・予測の内容になります。

この頃のアメリカは対テロ戦争の真っ只中で、2021年のアフガニスタン撤退まで10年以上を要することになります。

この隙をみてロシアはヨーロッパ、とくにドイツに接近し、ドイツも経済的な利益のためにロシアの天然ガス供給に全面的に頼ることになり、それが結果的には2022年2月のウクライナ侵攻で大きな痛手となります。

そう考えると、ロシアへの資源依存はこの頃から「危ない」と言われてきたことでありますし、それによって新しい資源開発が進む流れにシフトしていく可能性も目えますね。

面白いのは、ロシアの地理的な要因が経済発展を大きく阻害している、というフリードマン氏の視点です。

確かに水利は産業の発展に欠かせない要因で、日本でも河川が多い大阪は古くから商業の中心地でしたし、江戸も徳川家康が灌漑や埋め立てを推奨したことで、首都にふさわしい豊かさを手に入れることができた歴史的な経緯があります。

そう考えると、河川がインフラの障壁にしかならないロシアの地理的要因はどうしようもない部分がありますよね。

それを克服するには、かつて中国の隋の時代に行ったような南北を結ぶ大河川の構築を目指さないといけませんが、果たして軍事に特化したロシアが今後それを実現できるのかどうか・・・

「新・100年予測・ヨーロッパ炎上」(2015年)によるウクライナ危機

前著からさらに4年後に刊行された「100年予測本」です。

本書では予測の対象をヨーロッパに限定して、さらに密度の濃い予測を展開しています。

冒頭では著者の家族の歴史やアメリカへの逃避行など、個人的なレポートが綴られており、これまでの国際情勢本とは異なる角度からヨーロッパが置かれた状況を語ろうという流れになっていますね。

そんな本書で取り上げられたロシアではウクライナとの関係が書かれています。

2014年にクリミア併合があったため、その流れもあるのかもしれません。

ここで書かれたロシアと周辺国との関係、プーチンが目指す世界観など、かなり興味深かったので、その中からとくに関心をもった記述をまとめていこうと思います。

【ロシア経済の要求】

・ロシア経済は資源輸出を通じて、ヨーロッパ大陸諸国に依存するようになっていた

・ヨーロッパの側もそれを望んでいた

・ロシアは「エネルギー価格の低さ」「需要の継続(ロシア以外でエネルギーを買われるリスク)」「エネルギーを輸出するパイプラインの安全性」の3つの不安を抱えていた

・とくに重要な取引先であるドイツ、オーストリアにエネルギーを安定して供給するには、ロシアでも顧客の国でもない地域や、ベラルーシ、ウクライナ、ポーランドなどの東欧地域の安全を確保しなければいけない

・パイプラインが通る地域で発生する「通行料」を少しでも安く抑える方法を常に模索していた(最終的にエネルギー価格に上乗せする形になるから)

・以上の理由でベラルーシやウクライナをある程度、思い通りに動かせる状態にしておく必要があった

【ロシアが見るウクライナ】

・東部地域と西部地域で政治的主張や文化が異なるウクライナは本質的に「脆弱さを抱えている」(分裂しやすいという意味で)

・分裂していると、そこに利害をもつ存在に操られてしまう可能性がある

・ロシア自身が長年に渡ってウクライナを操ってきたので、その危険は把握している

・そのためウクライナに関与する外国人を脅威とみなす傾向がある

【NATOへの不信感の理由】

・冷戦後に東欧諸国をNATOに加盟させたこと

・アメリカもヨーロッパもソ連崩壊後のロシアを軽く見ており「何もしてこない」と踏んでいたこと

・アメリカやヨーロッパはロシアとのビジネスにだけ関心を示し、国家地政学的なロシアの危機感をないがしろにしたと感じた

【プーチン氏について】

・KGB出身のプーチン氏は、その職業上の特性から「富や権力」よりも「愛国心」「プロとしての強いプライド」を持っている

・強いプライドをもった人間は「負けることには決して耐えられない」

・プーチン氏が大統領の座についたロシアは敗者で、西側諸国から関心を持たれず、軽い扱いを受けていた。そしてそんな祖国を見るのに、国家守護のプロとして自負心を持っていたプーチン氏は耐えられなかったと考えられる

・ロシアの力を再生させることが彼の最大の目標になった

・9.11後のアメリカが中東やテロ戦争に関わっていることでヨーロッパへの関心が薄れ、ロシアの力を再生できるチャンスと見た

・KGB出身のプーチン大統領にとっては「境界地帯の地政学的問題が永遠に解決しない」ということ「戦略は常に最悪の事態を想定して立てること」を徹底して叩き込まれている

・ロシアが目指す戦略は「ヨーロッパ平野のできる限り西に進出すること」「カルパチア山脈まで到達して、そこを防護壁として利用できるようにすること」

・どちらも非常に困難である

以上となります。

前2著に比べて、こうしたロシアに対して「アメリカが取るべき戦略の概要」は書かれていませんでしたが、今回はまた違ったテーマが本書を支配しているということでしょう。

著書の最後に「本書は歴史書である」と著者が述べていることから、本書は国際情勢の分析と予測というよりは「ヨーロッパの歴史と文化、地理の特性」などを丁寧になぞっていくことで「見えるものがあるのでは」という「問いかけ」の部分が大きいと思います。

人と人との関り合いや、著者の青春時代の思い出などが細かく書かれている部分、「ヨーロッパ人としてどうあるべきか」という姿勢が興味深く感じました。

それゆえにプーチン大統領の思考に迫っている部分もあって、そこが今回のウクライナ侵攻に大きな影響を及ぼしたと感じられます。

読み応えのある本だったので、ヨーロッパの裏の歴史を読み解くには非常に適した著書だと思いますね。

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まとめ

世界的な戦略提言者であるジョージ・フリードマン氏の著書を通じて、現在ロシアとウクライナの間で起こっている戦争を読み解いてみるという試みでした。

最初の2作はアメリカ視点のロシアで、最後の1作はヨーロッパ人としてのロシアを語った部分を取りあげましたが、どちらもロシアに関する知識の薄い自分にとっては「なるほどなあ」と感心するものばかりでした。

専門家の方やこの方面に詳しい知見の持ち主であれば、常識的な内容だったかもしれませんが、そうではない一般人の自分には世界を見るための「物の見方」を与えてくれた貴重な書籍だったと思います。

もし私同様に「ロシアについて」興味をもっていて、普通の解説本では満足できないというのであれば、全体を通して広く世界を見ることができるこのシリーズは知的好奇心を刺激される良書だと感じていますので、ぜひ一度読んでもらえればなと思っています。

*ちなみにシリーズの最新版である「アメリカ大分断」(2020年)を一読しましたが、かなり難解な文章でギブアップしました。著者の哲学的な思考がかなり入り混じっていて、シンプルな状況分析を読みたかった自分的にはちょっとお手上げという感じです。アメリカの深部について知りたければ、かなり深い内容になっていますので、そうした方面に興味のある人ならおすすめかもしれません。

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